契約の種類が違っても、契約書によく出てくる条項というものがあります。たとえば、秘密保持、権利義務の譲渡禁止、有効期間、中途解約、解除、期限の利益の喪失、反社会的勢力の排除、損害賠償、不可抗力免責、残存条項、協議解決、専属的合意管轄などです。
これらの条項は、契約が順調に進んでいるときにはあまり意識されないかもしれません。しかし、情報の取扱いや契約の終了、トラブルが起きた場合の対応など、契約実務では重要な意味を持ちます。ここでは、契約書でよく見かける代表的な条項について、基本的な意味と、契約書を確認するときに意識したい事項を簡単に紹介します。すべてを一度に覚える必要はありませんが、まずは、秘密保持、解除、損害賠償、専属的合意管轄など、トラブルになったときに影響が大きい条項から押さえていくとよいでしょう。
まず押さえたい頻出条項一覧
| 条項 | どんな条項か | 確認したい事項 |
|---|---|---|
| 秘密保持 | 相手方から開示された情報の取扱いを定める | 秘密情報の範囲、適用除外、契約終了後の取扱い |
| 権利義務の譲渡禁止 | 契約上の地位や権利義務の譲渡等を制限する | 何が対象か、承諾が必要となる範囲 |
| 有効期間 | 契約がいつからいつまで効力を持つかを定める | 期間の長さ、自動更新の有無、更新停止の期限 |
| 中途解約 | 有効期間中でも契約を終了できるかを定める | 中途解約の可否、通知期限 |
| 解除 | 一定の場合に契約を終了できるようにする | 無催告解除の事由、催告解除の条件 |
| 期限の利益の喪失 | 将来の支払時期まで履行しなくてよい利益を失う場合を定める | どの事由で期限の利益を失うか |
| 反社会的勢力の排除 | 反社会的勢力との関係を遮断するための条項 | 該当事由、解除との関係 |
| 損害賠償 | 契約違反があったときの賠償責任を定める | 賠償範囲、上限の有無 |
| 不可抗力免責 | 当事者の責めに帰することができない事情による責任免除を定める | 不可抗力の内容、免責の範囲 |
| 残存条項 | 契約終了後も効力が残る条項を定める | どの条項が存続するか |
| 協議解決 | 定めのない事項や疑義が生じた場合に協議で解決を図る旨を定める | 協議の対象となる事項 |
| 専属的合意管轄 | 紛争が生じた場合の裁判所をあらかじめ定める | 指定される裁判所 |
秘密保持
秘密保持とは、相手方から開示された秘密情報をどのように取り扱うかを定める条項です。契約を締結して取引を行うと、相互に自社の情報を開示することがあります。そのため、開示された情報を第三者に開示しないことや、契約の目的以外に使用しないことを約束するのが一般的です。
もっとも、開示された情報のすべてが無条件に秘密保持義務の対象になるとは限りません。たとえば、もともと自己が保有していた情報や、公知の情報などは、適用除外として明示しておくのが通常です。
また、契約が終了したからといって、直ちに秘密保持義務まで消えてしまうと不都合が生じます。そのため、一定期間は契約終了後も秘密保持義務を存続させる、いわゆる残存条項を設けることが一般的です。
契約書を確認するときは、秘密情報の範囲、適用除外、契約終了後の取扱いを押さえておきたいところです。
権利義務の譲渡禁止
権利義務の譲渡禁止とは、契約に基づいて生じた権利や義務、あるいは契約上の地位を、相手方の承諾なく第三者に譲渡したり引き受けさせたりすることを禁止する条項です。
契約は、相手方を信用して締結するものです。そのため、相手方が勝手に別の者に変わってしまうことは、当事者にとって看過できない場合があります。こうした事態を防ぐため、契約上の地位や権利義務の譲渡を制限する条項が置かれることが一般的です。
何が譲渡禁止の対象になるのか、また、相手方の承諾が必要となる範囲がどこまでなのかは確認しておきたい事項です。
有効期間
有効期間とは、契約がいつからいつまで効力を持つのかを定める条項です。特に、継続的な取引契約では、契約を有効とする期間を明確にしておく必要があります。
たとえば、「契約締結日から1年間有効とする」と定めたり、「期間満了の○か月前までに申出がないときは自動更新する」と定めたりすることがあります。契約期間の定め方によって、取引の安定性や終了のしやすさが変わってきます。
有効期間の長さだけでなく、自動更新の有無や、更新を止めるための申出期限も見落とさずに確認したいところです。
中途解約
中途解約とは、有効期間中であっても契約を終了できるかどうかを定める条項です。継続的契約では、有効期間が長期に及ぶこともあるため、その期間中でも一定の条件のもとで解約できるようにしておく場合があります。
一般的には、「○か月前までに通知すれば解約できる」といった形で、事前の予告期間を設けることが多いです。契約の柔軟性を確保する一方で、相手方に突然の不利益を与えないようにする趣旨があります。
中途解約が認められているかどうか、認められている場合にはどのくらい前までに通知が必要かは、契約書を読む際のポイントになります。
解除
解除とは、一定の事由が生じた場合に、契約を終了させることができるようにする条項です。契約を終了させる方法としては、中途解約とは別に、債務不履行や信用不安などを理由とする解除が定められることが一般的です。
解除条項には、大きく分けて無催告解除と催告解除があります。無催告解除とは、相手方に是正を求めることなく直ちに解除できる場合をいいます。たとえば、監督官庁から処分を受けた場合や、資産状態・信用状態が著しく悪化した場合などが例として定められることがあります。
これに対し、催告解除とは、契約違反があった場合に、まず相手方に是正を求め、それでも改善されないときに解除できるとするものです。
また、解除した場合に損害賠償請求ができることを確認する条項が併せて置かれることもよくあります。
どのような場合に無催告解除ができるのか、また、どのような場合に催告が必要なのかは、特に意識して見ておきたい部分です。
期限の利益の喪失
期限の利益とは、支払時期などが将来に定められている場合に、その時期までは履行しなくてよいという債務者側の利益をいいます。期限の利益の喪失条項は、どのような場合にその利益を失うのかを定めるものです。
民法でも、たとえば債務者が破産手続開始決定を受けた場合などには期限の利益を失うとされていますが、それ以外の事由がすべて網羅されているわけではありません。そのため、契約書では、一定の事由が生じた場合に期限の利益を喪失させる旨を定めておくことが一般的です。金銭債務がある契約では、解除条項とあわせて定められることも多くあります。
どのような事由が期限の利益喪失事由として定められているのかは、あらかじめ確認しておきたいところです。
反社会的勢力の排除
反社会的勢力の排除とは、暴力団等の反社会的勢力との関係を遮断するための条項です。相手方が反社会的勢力に該当することが判明した場合や、関係を有していることが判明した場合に、契約を解除できるようにしておくのが一般的です。
この種の条項は、政府の指針や各都道府県の暴力団排除条例の考え方にも沿うものであり、自社を守るうえでも重要です。現在では、多くの契約書に盛り込まれている代表的な条項の一つといえます。
どのような場合に反社会的勢力との関係があると判断されるのか、また、解除との関係がどのように定められているのかは見ておきたいポイントです。
損害賠償
損害賠償条項とは、契約上の義務に違反したことによって相手方に損害を与えた場合に、どのような範囲で賠償責任を負うのかを定める条項です。
契約上の義務に違反し、その責任が自己にある場合には、相手方に生じた損害を賠償しなければならないのが原則です。ただし、契約書では、責任の範囲を限定したり、特別損害を除外したりする形で調整することもよくあります。
損害賠償の範囲や、賠償額の上限の定めがあるかどうかは、押さえておきたいポイントです。
不可抗力免責
不可抗力免責とは、当事者の責めに帰することができない事情により債務の履行が遅れたり、履行できなくなったりした場合に、責任を免除するための条項です。
たとえば、天災、感染症の流行、戦争、法令改正などが不可抗力として例示されることがあります。あらかじめ不可抗力の内容をある程度明確にし、その場合には債務不履行責任を負わないことを定めておくことがあります。
どのような事情が不可抗力に含まれるのか、また、免責の範囲がどのように定められているのかは確認しておきたい事項です。
残存条項
残存条項とは、契約が終了した後も効力を維持させる条項がどれであるかを定めるものです。
契約が解除や期間満了などにより終了すると、原則として契約上の条項もその効力を失います。しかし、秘密保持や損害賠償、合意管轄など、契約終了後も引き続き効力を維持させることが望ましい条項があります。そのため、あらかじめどの条項が契約終了後も存続するのかを明示しておくことがあります。
契約終了後にも効力が残る条項として何が定められているのかは、確認しておきたいところです。
協議解決
協議解決条項は、誠実協議条項とも呼ばれます。契約書に定めのない事項が生じた場合や、契約内容の解釈に疑義が生じた場合に、当事者間で協議して解決を図る旨を定めるものです。
もっとも、この条項があるからといって、それだけで特別な法的効果が強く認められるわけではありません。実務上は、「まずは話し合いで解決を目指す」という姿勢を示す意味合いが大きい条項といえます。
協議の対象となる事項がどのように定められているのかは、一度確認しておくと安心です。
専属的合意管轄
専属的合意管轄とは、紛争が生じた場合に、どの裁判所に訴訟を提起するのかをあらかじめ定める条項です。
通常は、被告の所在地を管轄する裁判所など、民事訴訟法の定めに従って管轄裁判所が決まります。しかし、当事者は合意によって、第一審に限り、特定の裁判所を専属的合意管轄裁判所として定めることができます。紛争時の手続を明確にするため、契約書ではよく見られる条項です。
どの裁判所が専属的合意管轄裁判所として定められているのかは、契約書を確認するときに押さえておきたい事項です。
まとめ
契約書には、契約の種類を問わず、よく見かける条項があります。これらの条項は、情報管理、契約の継続や終了、トラブル発生時の対応など、契約実務のさまざまな場面で重要な役割を果たします。
契約書を確認するときは、条項があるかどうかだけでなく、その内容が自分にとってどのような意味を持つのかを見ることが大切です。個別の条項については、今後それぞれ詳しく解説していきます。

