契約書に法律上の決まった書き方はあるのか
契約書といっても、一定の類型の契約を除けば、「この内容を、この順番で、この表現で書かなければならない」ということが、法律で一律に定められているわけではありません。タイトルの付け方にも、特別な決まりはありません。
もっとも、決まった書式がないからといって、自由に書けばよいというわけでもありません。契約実務では、よく用いられる基本構成があります。
そのため、契約書を作成する際には、まずこの基本的なスタイルを押さえておくことが大切です。この記事では、契約書の一般的な構成と、作成から締結までの基本的な流れをわかりやすく解説します。
契約書の一般的な基本構成
契約書は、一般に次のような構成で作成されます。
- タイトル・表題
- 前文
- 各条項
- 後文
- 作成日(締結日)
- 署名または記名押印欄
- 印紙(必要な場合)
以下、それぞれの内容を見ていきます。
タイトル・表題
通常、契約書には、その契約の内容を表すタイトルを付けます。もっとも、タイトルの付け方に厳密なルールがあるわけではありません。そのため、シンプルな表題にすることもできますし、やや詳しいタイトルにすることもできます。
ただ、後で契約書を管理しやすくするためにも、契約の内容に即したタイトルを付けるのが望ましいでしょう。
前文
前文では、誰と誰が契約を締結するのかを明示します。
その際、契約当事者について「売主」「買主」「委託者」「受託者」「甲」「乙」などと定義し、契約自体についても「本契約」と定義するのが一般的です。前文で当事者や契約の名称を明確にしておくと、その後の条文が読みやすくなります。
各条項
契約書の中心となるのが各条項です。一般に、契約書は「第○条」「第○項」「第○号」という形で構成されます。つまり、条を置き、その中に必要に応じて項を設け、さらに項の中に号を置くという形です。
なお、条の中に項が1つしかない場合には、あえて項番号を付けず、そのまま本文として記載することもよくあります。また、例外を定める必要がある場合には、ただし書が置かれることもあります。
条項の並びに厳密な決まりはありませんが、契約の目的、対象となる業務や物、報酬、支払方法、契約期間、解除、損害賠償、秘密保持、合意管轄などの順で整理される例が多く見られます。
契約書でよく見られる条項
契約書には、契約の種類に応じてさまざまな条項が置かれますが、一般的には次のような条項がよく見られます。
- 契約の目的に関する条項
- 業務内容や対象物に関する条項
- 報酬に関する条項
- 支払時期・支払方法に関する条項
- 契約期間に関する条項
- 契約解除に関する条項
- 損害賠償に関する条項
- 秘密保持に関する条項
- 合意管轄に関する条項
もっとも、必要となる条項や重視すべき点は、契約の種類や内容によって異なります。そのため、個別の契約内容に応じた検討が必要です。
後文
後文では、契約書の原本を何通作成するのか、また、その原本を当事者の誰が保有するのかを明確にするのが一般的です。
たとえば、「本契約書を3通作成し、貸主、借主及び連帯保証人が署名又は記名押印のうえ、各1通を保有する」といった形で記載されることが多くあります。
作成日(締結日)
作成日または締結日には、実際に契約書を作成し、締結した日を記載します。
この日付がいつになるかによって、条項の解釈や契約上の権利義務に影響が生じることがあります。たとえば、契約期間の満了時期、更新拒絶の期限、表明保証条項の基準時などに関わる場合があります。
そのため、作成日や締結日は正確に記載することが大切です。なお、実際には契約書の作成日と締結日が一致しない場合もあるため、どの日を記載するのかは契約の実情に応じて確認する必要があります。
署名または記名押印欄
最後に、契約を締結する当事者の署名または記名押印欄を設けます。住所や所在地を併せて記載することも一般的です。
契約当事者が株式会社である場合には、その契約が契約締結権限を有する者によって締結されたことを示すため、通常は代表権を有する代表取締役などの氏名を記載します。
なお、契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、必ずしも署名押印を要するわけではありません。もっとも、書面に署名や押印があると、その文書が本人の意思に基づいて作成されたことの立証に役立つため、署名や記名押印がされることが多くあります。
印紙
契約書が印紙税法上の課税文書に該当する場合には、印紙を貼付し、消印をする方法で印紙税を納付する必要があります。課税文書に当たるかどうかは、契約書の実質的な内容によって判断されます。
印紙を貼付するのは、契約書の原本です。そのため、場合によっては印紙税額が高額になることを踏まえ、原本を1通のみ作成し、そのほかは写しとする方法がとられることもあります。
また、印紙税は文書を作成して交付する場合に問題となるため、一般に、電子契約は印紙税の課税対象とはならないとされています。
契約書作成の一般的なプロセス
契約書は、単に書面を作って署名押印すれば終わりというものではありません。実際には、交渉、ドラフトの提示、修正、調整といった過程を経て締結されるのが通常です。
ここでは、契約書作成の一般的な流れを見ていきます。
1 契約締結に向けた交渉を開始する
契約書の作成は、まず当事者間で契約締結に向けた交渉を開始するところから始まります。交渉に先立って、必要に応じて秘密保持契約を締結することもあります。
2 契約内容を双方で検討する
次に、どのような内容で契約を締結するのかについて、当事者双方で検討を進めます。ここでは、契約の目的、業務内容、報酬、期間、責任の範囲などが主な検討事項となります。
3 一方当事者が契約書のドラフトを提示する
当事者のいずれかが、契約書のドラフト案を作成し、相手方に提示します。この段階で、必要に応じて専門家に相談することもあります。
4 提示を受けた側が内容を確認し、必要に応じて修正案を示す
ドラフトを受け取った側は、その内容を確認し、自分にとって不利益な点や不明確な点がないかを検討します。そのうえで、必要があれば修正案を示します。
5 条項を交渉・調整する
その後、当事者間で修正案を踏まえて交渉し、条項を詰めていきます。双方の希望を調整しながら、最終的な文言を固めることになります。
6 合意に至った場合に契約書を締結する
交渉・調整の結果、内容について合意できた場合には、契約書を正式に締結します。
7 契約上の義務を履行する
契約締結後は、各当事者が契約に基づく義務を履行していくことになります。
8 契約が終了する
契約は、期間満了や合意解除などによって終了します。もっとも、必ずしも順調に終了するとは限らず、債務不履行などが生じて紛争に発展する場合もあります。
まとめ
契約書には、法律上の一律の書式があるわけではありません。しかし、契約実務には一般的な基本構成があり、それを押さえて作成することが大切です。
また、契約書は、単に署名押印をすれば終わりというものではなく、交渉、ドラフトの提示、修正、調整といった過程を経て締結されるのが通常です。
契約書の基本構成と作成の流れを理解しておくことは、実際に契約に関わる場面での助けになります。もっとも、必要となる条項や注意点は契約の種類によって異なるため、個別の契約内容に応じて検討することも重要です。
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