賃料不払いがあったらどうする?賃貸人が検討したい催告・解除・損害賠償の基本

契約書

契約書をきちんと作成していても、相手方が必ず約束どおりに債務を履行してくれるとは限りません。たとえば、賃貸借契約を締結したにもかかわらず、賃借人から期日どおりに賃料が支払われないことがあります。契約違反が起きたときは、状況に応じて、履行を求める、契約を解除する、損害賠償を請求するなどの対応を検討することになります。民法には、債務不履行があった場合の損害賠償や解除、金銭債務に関する特則などが定められています。

この記事では、賃貸人の立場で賃貸借契約を締結した場合の賃料不払いを例に、債務不履行に対してどのような対応が考えられるのかを、基本的な流れに沿って解説します。なお、実際に解除や訴訟を進められるかどうかは、契約内容や経緯、未払いの状況などによって変わります。以下は一般的な説明です。

1 まずは履行を求める

賃料の支払期日が過ぎても入金がない場合、まずは賃借人に対し、未払いがあることを伝え、速やかに支払うよう求めることになります。電話やメール、請求書などで連絡することもありますが、それでも支払がない場合や、後日の証拠を残しておきたい場合には、書面での催告を検討したいところです。催告による解除は民法541条の原則的な流れでもあり、相当の期間を定めて履行を求め、その期間内に履行がないときに解除が問題となります。

このとき利用を検討しやすいのが内容証明郵便です。内容証明は、一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスであり、いつ、いかなる内容の文書を、誰から誰あてに差し出したかを、日本郵便が差出人作成の謄本によって証明する制度です。他方で、日本郵便が証明するのは内容文書の存在であって、文書の内容が真実であることまで証明するものではありません。内容証明には配達証明を併用することもできます。

たとえば、
「未払賃料がありますので、〇年〇月〇日までにお支払いください。期限までにお支払いがない場合には、契約解除その他の法的手段を検討します。」
といった内容の催告書を送ることが考えられます。

内容証明郵便については、別の記事で詳しく解説しています。

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2 支払がない場合は解除を検討する

賃借人が賃料の支払を怠っていても、賃貸借契約が存続している限り、賃貸人としての義務が直ちになくなるわけではありません。たとえば、目的物の修繕が必要な場合には、賃貸人として対応を要する場面もあります。
そのため、賃料不払いが続く場合には、このまま契約関係を維持すべきかどうか、解除を含めて検討する必要があります。

相手方が債務を履行しない場合、債権者は契約の解除を検討することがあります。民法541条は、当事者の一方がその債務を履行しない場合に、相手方が相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、契約を解除できると定めています。

もっとも、賃貸借契約では、賃料が一度支払われなかったからといって、直ちに解除が認められるとは限りません。賃料不払いを理由とする解除については、未払いの期間や回数、これまでの経緯などを踏まえて、契約関係を維持することが困難といえるかを慎重に判断する必要があります。

また、解除の意思表示も、後で「いつ解除したのか」が問題になることがあります。そこで、催告と同じく、解除の通知についても内容証明郵便の利用が検討されます。

3 損害賠償を請求できる場合がある

契約違反によって損害が生じた場合には、損害賠償の請求も問題になります。民法415条は、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときや、債務の履行が不能であるときに、債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求できると定めています。もっとも、その不履行が契約その他の債務の発生原因および取引上の社会通念に照らして責めに帰することができない事由によるものである場合には、請求が認められないことがあります。

ただし、賃料支払債務のような金銭債務については特則があります。契約で遅延損害金の定めがあればその定めに従い、定めがない場合には法定利率によることになります。民法419条は、金銭の給付を目的とする債務の不履行について、金銭債務では不可抗力をもって抗弁とすることができないと定めています。さらに、法定利率は民法404条で定められており、現在の民法では年3パーセントを基準として、3年ごとの見直しの仕組みが置かれています。

そのため、賃貸人としては、賃料が支払われなかった事実を前提に、未払賃料そのものに加えて、契約書で定めた遅延損害金、または法定利率による遅延損害金を請求することが考えられます。

4 それでも支払われないときは裁判所の手続を検討する

催告をしても支払がなく、解除や損害賠償の請求にも応じない場合には、裁判所の手続を検討することになります。裁判所の案内では、家賃の不払や報酬請求、売買代金請求、損害賠償請求などについて、支払督促、調停、訴訟が対応する手続として挙げられています。さらに、少額訴訟は60万円以下の金銭の支払を求める場合に限って利用できます。

支払督促は、原則として相手方の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所書記官に申し立てる手続です。これに対し、通常訴訟は、裁判官が双方の言い分や証拠を踏まえて判決による解決を図る手続です。請求額や事案の内容に応じて、支払督促、民事調停、少額訴訟、通常訴訟などの手続を検討することになります。なお、判決や仮執行宣言付支払督促などを得ても、相手方が任意に支払わない場合には、さらに強制執行を検討することになります。

5 未払いを放置すると時効の問題が生じることもある

契約違反があったのに長く放置してしまうと、消滅時効の問題が生じることがあります。民法166条は、債権について、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅すると定めています。未払いがある場合には、早めに事実関係や証拠を整理し、対応方針を考えることが大切です。

まとめ

相手方が契約どおりに債務を履行しない場合、一般には、まず履行を求め、それでも履行がないときは解除や損害賠償請求を検討し、必要に応じて裁判所の手続に進むことになります。民法には、債務不履行による損害賠償、催告による解除、金銭債務の特則が定められており、内容証明郵便は、催告や解除の意思表示を記録として残したい場面で利用が検討されます。

もっとも、賃貸借契約の解除が常に認められるわけではなく、個別事情によって結論が変わることもあります。実際に解除や明渡請求、訴訟提起まで進めるかどうかは、契約内容や未払いの経過を踏まえて慎重に判断することが大切です。

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